日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー3 免疫病としての乾癬
佐野 栄紀
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2015 年 38 巻 4 号 p. 281

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抄録

  乾癬は,皮膚のどこにでも生じうる炎症性角化症であり,表皮の肥厚・過角化,分化の異常,および炎症細胞浸潤,毛細血管増殖・拡張を特徴とする.白人では人口の2-4%,日本人では0.3%が罹患している.現在までに約50の感受性遺伝子が報告されているが,これら遺伝子の機能から類推すれば乾癬患者には炎症系・免疫学的な遺伝素因が存在することが想像される.通常生後20年以上を経て外傷や感染症など環境因子が加わり,乾癬が発症する.最近10年余りで,発症メカニズムの多くの部分が解明された.表皮のバリア破綻,抗菌ペプチドを含む表皮由来の物質に反応して樹状細胞など自然免疫が活性化,引き続き獲得免疫とりわけTh17細胞の分化増殖が起こる.これが分泌するIL-17やIL-22が表皮角化細胞を刺激,表皮肥厚をきたすとともにケモカイン,抗菌ペプチドの分泌が増加し,さらに自然免疫,獲得免疫系を活性化する.この,表皮と免疫系のおりなす悪循環によって乾癬が発症・増悪し,難治性の慢性疾患となる.近年,この発症メカニズムの解明に対応するように,生物学的製剤や分子標的薬が次々と開発され,その卓越した臨床効果により乾癬治療においてパラダイムシフトが起きている.乾癬は,上皮系-免疫・炎症系のおりなす慢性疾患として炎症性腸疾患などとも共通機序がある.このセッションでは,免疫病としての乾癬につき最新情報を紹介したい.

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