日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー4 ヒト腫瘍免疫学の進歩と新たな時代を迎えたがん免疫療法
河上 裕
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2015 年 38 巻 4 号 p. 282

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抄録

  長年期待されていたT細胞応答を利用するがん免疫療法が,免疫チェックポイント阻害療法(PD-1/PD-L1,CTLA4阻害など)と培養T細胞利用養子免疫療法(遺伝子改変抗腫瘍T細胞など)として,従来免疫療法が効く特殊ながんとされた悪性黒色腫や腎がんを超えて,肺がんや白血病など多様ながんに対して,進行がんでも持続する腫瘍縮小効果を示したことは,がん免疫療法の位置づけを一変させ,世界中でがん免疫療法の開発が進められている.一方,効果が認められないがん種や患者も多く,今後,治療効果を予測して症例を選択したり個別化治療を可能にするバイオマーカーの同定,治療効果が期待できない症例を効くように変える方法も含めて,抗腫瘍T細胞応答に重要な複数のポイントを制御する複合免疫療法による治療効果の改善が期待される.この解決のためには,ヒトがん免疫病態の理解と制御法の開発が必要である.実際,ヒト腫瘍免疫学は,がん免疫療法の開発と並行して発展してきた.我々は,がん細胞のpassenger変異由来変異ペプチドに対する抗腫瘍T細胞応答が起こること,driver変異などで起こるがん遺伝子活性化はむしろ免疫抑制機構を作動させることを明らかにした.がん細胞の遺伝子異常に加えて,患者の免疫体質,腸内細菌叢などの環境因子の影響も考えられている.本セミナーでは,ヒトがん免疫病態とがん免疫療法の最新知見を紹介したい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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