日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー5 遺伝統計学におけるゲノムワイド関連解析の現状
岡田 随象
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2015 年 38 巻 4 号 p. 283

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抄録

  遺伝統計学とは,遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から評価する学問であり,解析手法の一つとしてゲノムワイド関連解析(genome-wide association study; GWAS)が知られている.ゲノムワイド関連解析は,数千人~数十万人を対象にゲノム領域全体を網羅する数十万~数千万の遺伝子多型(=ゲノム塩基配列の個人差)における疾患罹患リスクを検定する手法であり,我が国の理化学研究所で世界に先駆けて実施された.現在,ゲノムワイド関連解析は次世代シークエンサーと並んでヒト疾患ゲノム解析の代表的な手法となっており,免疫関連疾患を含む数百以上のヒト形質を対象に無数の疾患感受性遺伝子領域が同定されている.近年では,ゲノムワイド関連解析の結果を多彩な生物学的・医学的データベースと分野横断的に統合させることにより,新たな疾患病態の理解や,疾患疫学の再解釈,新規ゲノム創薬が可能になることも明らかとなってきた.これらの成果の大半はWeb上で公開されており,誰でも簡単に閲覧することが可能になっている.本セミナーでは,ゲノムワイド関連解析を取り巻く最新の状況を概説すると共に,一般の研究者にとってどのような活用方法があるか述べたい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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