日本臨床免疫学会会誌
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ビギナーズセミナー
ビギナーズセミナー6 CRISPR/TALENによるゲノム編集技術とその応用
浅原 弘嗣
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2015 年 38 巻 4 号 p. 284

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抄録

  従来,遺伝子プログラムを書き換える手技としては,ES細胞やiPS細胞を用い,かつ,遺伝子組み換えの技術を応用したものがほとんど唯一の手法であったが,近年,TALENやCRISPRを用いた遺伝子編集技術の開発により,ノックアウトマウス・ラットやノックアウト細胞が簡便,安価,かつ正確に行うことができるようになったばかりか,以下にあげる今まで困難であったジェネティックス研究が可能になりつつある.(1)Y染色体などの高度なリピート配列をもつ遺伝子の改変は困難であったため,ES細胞を用いたY染色体のノックアウトマウスの報告は今までなかったが,TALEN/CRISPRを用いることで,Y染色体上の遺伝子がもつ機能が詳細に明らかになりつつある.(2)腱・靭帯や関節軟骨などの生理・病理学的研究はマウスでは困難なことが解析が多かったが,ノックアウトラットを用意に作成できるようになり,この分野の研究が一段と進むことが期待されている.(3)近い場所に位置する二つの遺伝子のダブルノックアウトマウス作成やUTRにおけるshort deletion,loxなどの小さな痕跡も残さないノックアウトマウスの作成は従来困難であったが,これらの遺伝子改変マウスが簡易に作成できるようになった.我々は,TALEN/CRISPRシステムを導入することで,関節炎,骨格形成をモデルに上記課題に取り組んでおり,これら研究の現況を紹介したい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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