日本臨床免疫学会会誌
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ワークショップ
WS4-1 アレルギー疾患研究へのアプローチとその限界
善本 知広松下 一史
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2015 年 38 巻 4 号 p. 291a

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抄録
  アレルギー疾患の本質を担うIgE抗体が発見されて来年で50年を迎える.過去20年ほどの間にアレルギーに関する研究は飛躍的に進展してきた.そこには免疫学の進歩が大きく貢献している.しかし,未だアレルギー発症機序には不明な点が多く,根本的な治療技術は確立されていない.その結果,国民の約40%がアレルギー性鼻炎の症状に悩み,食物アレルギーの児童が学校給食によって死に至る症例も後を絶たない.
  このような問題点が生じている理由として次の2つが考えられる.まず,アレルギー疾患の多様性・複雑性があげられる.アレルギー反応は抗原の種類や感作経路などによって多様な炎症像を呈する.さらに,これまで知られていた免疫細胞に加え,2009年新たに発見された2型自然リンパ球や,上皮細胞などの非免疫細胞がアレルギー性炎症に関与することが明らかになった.2つめの理由として,動物モデルにおける知見とそれの患者への応用との間に大きな乖離が見られることがあげられる.遺伝子改変マウスを用いた研究成果は非常に有用である.しかし,マウスとヒトでの発症機序は必ずしも一致しない.そのためにも,モデルマウスで得られた知見と患者で得られた情報とを相互にフィードバックしていくことが重要である.
  本ワークショップでは,私たちの研究を中心に,様々なヒトアレルギー疾患の病態を基盤としたモデルマウスの作製と発症機序の解明,さらに新規治療技術の開発を紹介したい.
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© 2015 日本臨床免疫学会
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