日本臨床免疫学会会誌
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WS4-3 全身性エリテマトーデスの中枢神経障害における髄液中自己抗体測定の臨床的有用性とその限界について
藤井 隆夫近藤 聖子石郷岡 望三森 経世
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2015 年 38 巻 4 号 p. 292a

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抄録

  全身性エリテマトーデスの中枢神経障害(NPSLE)は難治性病態のひとつである.その発症機序は不明であるが,一部の自己抗体が関与している可能性がある.血液脳関門の透過性亢進により血中の抗N-methyl-D-aspartate glutamate receptor(NR2)抗体が中枢神経系に流入し,海馬の神経細胞を直接的に障害することが示唆されている.われわれは,NPSLEにおいて髄液中抗NR2抗体陽性例では陰性例に比し髄液中IL-6濃度が有意に上昇することを確認した(67.4 vs. 22.3 pg/mL, p<0.01).一方,髄液中抗U1RNP抗体陽性が髄液中IFN-αやMCP-1濃度の上昇と関連することを報告し,これらのinflammatory mediators(IMs)がアストロサイトの傷害を示唆する血清中S100B濃度と相関することを示した(IFN-α, r=0.541, p<0.001; MCP-1, r=0.441, p<0.005).したがって髄液中抗U1RNP抗体(あるいはその免疫複合体)はIMsを介して間接的に脳障害に関与すると考えている.しかし,これら髄液中の自己抗体はNPSLEの診断には有用であったが特異的な臨床・画像所見を予測することは困難であった.これはひとりのNPSLE患者がしばしば複数の自己抗体を有すること,また自己抗体のみではすべての病態形成が説明できないことに起因すると考えられる.髄液中の自己抗体が治療ターゲットを決めるバイオマーカーになるためには,他の自己抗体も含め,より詳細な検討が必要である.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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