日本臨床免疫学会会誌
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Rising Star Workshop
RSW-1 Specialized pro-resolving mediatorsによるリウマチ性疾患制御への挑戦
村上 孝作村上 功塩見 葵石川 優樹中嶋 蘭橋本 求井村 嘉孝湯川 尚一郎吉藤 元大村 浩一郎藤井 隆夫三森 経世
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2015 年 38 巻 4 号 p. 293a

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抄録

  n-6系多価不飽和脂肪酸に分類されるアラキドン酸(AA)が主に炎症惹起性メディエーターの基質であり,リウマチ性疾患における炎症・疼痛を増悪させることは,NSAIDsが今なお数多く処方されている事実からも論をまたない.一方,n-3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は,近年のメタボローム解析技術発展に伴って,酵素的・非酵素的に強力な炎症収束作用を有するメディエーター(Specialized pro-resolving mediator; SPMと称される)に変換されることが明らかとなってきた.これまでに,変形性膝関節症の滑液中に種々のSPMが検出されること,また膝蓋下脂肪組織由来の脂肪細胞がT細胞のIFN-γ分泌上昇やマクロファージのIL-12p40分泌低下を促進させることが明らかとなっている.我々は,同疾患における局所滑膜組織にSPMに対する既知の受容体が発現しており,LPS刺激によって一部の受容体発現量が増加することを突き止めた.さらに,関節リウマチや各種リウマチ性疾患では,各種血球系細胞表面のSPM受容体が健常対象と比較し増加すること,副腎皮質ステロイド投与によってそれらの発現量が更に増加する傾向にあることも明らかとなりつつある.SPMが免疫疾患全般における疾患制御の新規ターゲットとなり得るpotentialについて,検討を進めて参りたい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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