日本臨床免疫学会会誌
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Rising Star Workshop
RSW-2 デスモグレイン3特異的T細胞が誘導する多彩な皮膚病理
高橋 勇人
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2015 年 38 巻 4 号 p. 293b

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抄録

  尋常性天疱瘡(PV)は抗デスモグレイン3(Dsg3)自己抗体により全身皮膚や口腔粘膜などに水疱やびらんが多発する皮膚自己免疫疾患である.自己抗体の産生にはDsg3反応性CD4+ T細胞が密接に関連していると考えられている.私達の研究グループではマウスからDsg3特異的T細胞受容体(TCR)遺伝子を単離し,TCRトランスジェニックマウス(Dsg3H1マウス)を作成,解析を行ってきた.Dsg3特異的T細胞の挙動を解析すると,Dsg3依存性に免疫寛容を受けT細胞が除去されることから,マウスにDsg3特異的免疫寛容が存在することが示された.ある条件下では,Dsg3特異的T細胞は自己抗体を誘導するばかりでなく皮膚に直接浸潤して皮膚炎を生じ,その病理学的変化が従来病態がほとんど不明であったinterface dermatitis(ID)であることを明らかにした.Dsg3特異的T細胞のIFNγを欠失させるとIDが生じない事から,IFNγがIDの誘導に重要であると判明した.一方,Dsg3H1 T細胞を,代表的なヘルパーT細胞サブセットであるTh17細胞に分化させ,皮膚炎を誘導させると,IDの病理は示さず,乾癬様の皮膚病理学的変化を誘導し,乾癬が表皮に対する自己免疫応答でも誘導されることを示唆した.Dsg3H1マウスはDsg3に対する液性および細胞性免疫の両者を解析可能とし,Dsg3特異的T細胞は天疱瘡だけでなく,炎症性皮膚疾患の病態解析にも有用と考える.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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