日本臨床免疫学会会誌
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スイーツセミナー
スイーツセミナー3-1 多発性硬化症治療の進歩:現在と未来
山村 隆
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2015 年 38 巻 4 号 p. 304

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抄録

  多発性硬化症(MS)は中枢神経系自己免疫疾患の代表であり,再発と寛解を繰り返しながら徐々に障害が進行する難病である.MSの第一世代医薬である,インターフェロンβ,グラチラマー酢酸は,作用機序と作用効果に不確実なところを残しながら,主に免疫制御作用を発揮する薬剤として評価されてきた.第二世代医薬は,特定の分子を標的にする分子標的医薬で,我が国ではフィンゴリモド(S1P受容体機能的アンタゴニスト)とナタリズマブ(抗α 4インテグリン抗体)が認可されている.いずれも第一世代医薬よりも全体として強い治療効果を発揮する.他方,これまで開発された薬剤を用いた治療では,ノンレスポンダーが一定の比率で現れる.これはMS病態の多様性を反映するものと考えられているが,治療反応性が予測できれば,適切な医薬による治療を早期に開始できる.米国が先導して話題になっている“Precision Medicine”に向けた研究開発は,癌に限らず,MSのような自己免疫疾患の治療を考える際にも重要な基本コンセプトになるであろう.本講演では,Precision Medicineによって免疫疾患の医療が大きく変化する可能性を議論したい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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