日本臨床免疫学会会誌
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一般演題(ポスター)
P5-001 ヒト間葉系幹細胞はIGFシグナルを介して機能的な制御性T細胞の誘導を調節する
宮川 一平中山田 真吾中野 和久阪田 圭山岡 邦宏田中 良哉
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2015 年 38 巻 4 号 p. 339a

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抄録

  【目的】ヒト間葉系幹細胞(hMSC)はIDOやTGFβを産生しTreg細胞を誘導するとされるが,その機序は不明な点が多い.近年,IGF等の増殖因子がT細胞分化を制御すると報告される.今回,hMSCが産生する増殖因子によるTreg細胞誘導機構を検討した.【方法】ヒトナイーブCD4+T細胞を抗CD3/28抗体刺激下でhMSC培養上清と2日間培養し,CD4+T細胞の増殖能,サイトカイン産生能,細胞表面分子を評価した.【結果】抗CD3/28抗体刺激によるCD4+T細胞の細胞増殖は,hMSC培養上清で抑制され,IL-4/10産生が亢進した.hMSCの培養上清は,CTLA-4,GITR,PD-1/L1,IGF1/2Rを発現し,CD4+T細胞の増殖抑制作用を持つCD4+FoxP3+Treg細胞を誘導した.hMSC培養上清中には,IGFの抑制因子であるIGFBP-4が大量に検出された.IGFは,IGF-Rを介してTreg細胞増殖を促すことからMSC培養上清中のIGFBP-4を中和したところ,Treg細胞が有意に増加した.またCD4+T細胞上のIGF-1Rを阻害することで抑制された.【結論】hMSCは可溶性因子を介して,IGFシグナルを受容するCD4+IGF1R+IGF2R+FoxP3+Treg細胞を誘導しT細胞の増殖を抑制した.一方,hMSCはIGFBP-4を産生することで,Treg細胞増殖を抑制する自動的な制御機構を有する可能性が示された.hMSCが産生するIGFBP-4の骨芽細胞分化阻害作用も報告されており,関節リウマチの新規治療ツールとして期待されるhMSC療法の効率化にIGFBP-4の阻害が有用である可能性が示唆された.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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