抄録
【目的】エンドセリン(ET)は血管内皮細胞由来の血管収縮因子と考えられている.しかし,我々は新たに活性化T細胞が血管内皮細胞非依存性ET産生を誘導することを見いだしたため,その誘導機序の解析をおこなった.【方法】健常者(20名)より採取した末梢血単核球(PBMC)を固層化抗CD3抗体で活性化させ,24時間後の培養上清のET濃度をELISAで測定した.また,磁気ビーズで分離したT細胞および単球分画をTranswell systemで隔てた状況下でT細胞を活性化させ,ET産生への影響を測定した.また,この系に幾つかの阻害抗体を使用し,ET産生に与える影響も検討した.【結果】PBMC中のT細胞を活性化させた時のみETの産生を認めた.Transwell systemにおいてT細胞を活性化させると,T細胞のみではET産生は見られず,活性化T細胞は単球分画からET産生を誘導させることが判明した.ET産生誘導は,抗IFN-γ抗体および抗TNF-α抗体により阻害された.【考察】ヒトPBMCをもちいたin vitro studyにおいて,T細胞の活性化を起点とする炎症下では血管内皮細胞非依存性のET産生が誘導されることが明らかとなった.そのメカニズムとして,活性化T細胞から産生されたIFN-γとTNF-αが単球分画に作用し,単球分画からのET産生を強く誘導する可能性が示唆された.