日本臨床免疫学会会誌
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第43回総会ポスター賞受賞記念論文
周期的な発熱・腹痛を主訴としMEFV遺伝子変異を認めた家族性地中海熱の1例
荻田 千愛松井 聖岸田 大覚道 真理子矢崎 正英中村 昭則東 幸太壺井 和幸安部 武生横山 雄一古川 哲也丸岡 桃田村 誠朗吉川 卓宏斎藤 篤史西岡 亜紀関口 昌弘東 直人北野 将康角田 慎一郎玉置 知子佐野 統
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2016 年 39 巻 1 号 p. 72-77

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抄録

  家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever = FMF)は,持続時間が1~3日と比較的短い周期性発熱と無菌性の漿膜炎を主徴とする単一遺伝性自己炎症性疾患に含まれる.自己炎症性疾患は自己免疫疾患,感染症と異なり,自己抗体,自己反応性T細胞,および病原体は同定されず,病因としては獲得免疫ではなく,自然免疫系の異常と考えられている.FMFはMEFV(Mediterranean fever)遺伝子の異常に伴うインフラマソームの機能異常により,IL-1βの産生が起こる自己炎症が病態の中心にある.地中海沿岸地域で最も有病率が高いのだが,本邦でも多数の症例が報告されている.本邦では,1976年に初めて症例報告されたが,MEFV遺伝子変異を有する症例が記載されたのは2002年のShinozakiらおよびTomiyamaらが最初であり以後遺伝子解析を含めた症例の集積が進んでいる.明らかな性差はなく,常染色体劣性遺伝を呈することが多いとされている.臨床症状や発熱の周期性により,典型例と非典型例に区分されており,典型例の発症年齢は成人発症例が比較的多い.今回,家族歴がなく,周期的な発熱と腹痛を主訴とし,MEFV遺伝子解析からFMFと診断した1例を報告する.症例は本邦に多い成人発症であり,遺伝子解析後にコルヒチンにより治療し,良好な経過をとっている.

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© 2016 日本臨床免疫学会
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