日本臨床免疫学会会誌
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WS2-4 免疫チェックポイント阻害剤による内分泌副作用の臨床とそのメカニズム
岩間 信太郎有馬 寛
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2016 年 39 巻 4 号 p. 350b

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抄録

  免疫チェックポイント阻害剤はT細胞の活性化を負に制御する分子に対するモノクローナル抗体で,細胞傷害性T細胞抗原(CTLA)4に対する抗体であるイピリムマブ(Ipi)とprogrammed cell death-1に対する抗体であるニボルマブが本邦でも近年使用開始された.これらの薬剤は,優れた抗腫瘍効果の一方で,自己免疫機序が想定される重篤な副作用を発症させ,特に,肝炎,腸炎,皮膚炎,内分泌障害が好発する.内分泌副作用として,下垂体炎,甲状腺機能異常症,副腎炎,1型糖尿病などが報告されており,薬剤によりその発症頻度は異なる.特に我々は,従来まれな疾患と考えられてきた下垂体炎が,Ipi使用者において約10%もの頻度で発症することに着目し,抗マウスCTLA4抗体をSJLマウスに連続投与することで下垂体に炎症細胞浸潤を呈する抗CTLA4抗体誘発下垂体炎マウスモデルを作成した.本マウスにおける病態解析を進め,抗CTLA4抗体は下垂体に発現するCTLA4に直接結合し,補体活性化を介したII型アレルギー反応により下垂体に炎症を誘発する可能性を報告した.さらに,Ipiにより下垂体炎を発症した患者血清中に抗下垂体抗体が存在することを明らかにし,臨床における抗下垂体抗体の診断的有用性を示した.本講演では抗CTLA4抗体による下垂体炎の発症メカニズムおよび実際の症例を紹介するとともに,現在名古屋大学で行っている臨床研究についても紹介したい.

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