2016 年 39 巻 6 号 p. 505-512
生体内のmemory T細胞分画に関して,近年一旦組織に移行した後循環に戻らずその組織に留まり続けるresident memory T細胞(TRM)の存在が明らかになり,研究が活発に進められている.TRMは細胞表面にCD69,CD103を発現し強いエフェクター機能を有する分画としての報告が多く,消化管,皮膚,呼吸器,生殖器上皮などバリア組織における異物侵入防御に働く他,脳神経系,腺組織,リンパ組織,肝臓,腎臓,膵臓,関節といった非バリア組織においても主にマウスモデルでその存在が報告され,慢性炎症性疾患,自己免疫疾患などにおける病態発現との関与も強く考えられるようになった.腫瘍免疫における役割も報告されつつある.本稿ではresident memory T細胞に関する現在までの知見をマウスとヒトの報告に分け,その構築,分布,疾患との関わりについて整理した.このT細胞分画の機能に関する理解を深める足がかりとしたい.