日本臨床免疫学会会誌
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総説
新生児ループス
横川 直人住友 直文三浦 大澁谷 和彦永井 宏後藤 美賀子村島 温子
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2017 年 40 巻 2 号 p. 124-130

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抄録

  新生児ループスは母体の抗SS-A抗体が関与して,新生児に心病変,皮膚病変,血球減少,肝機能異常などを引き起こす後天性の自己免疫症候群である.新生児ループス(心病変)は抗SS-A抗体陽性の妊娠の1-2%に合併し,致死率が約20%でペースメーカーが約70%必要となる重篤な合併症である.一方,皮膚病変は心病変よりも頻度は高いが,6か月以内に自然軽快する.新生児ループスの約半数は無症候性の母親に生じるため,児の特徴的な皮膚病変や心病変より新生児ループスを疑い,母親の抗SS-A抗体を測定することが大切である.前児の心病変は約10倍,皮膚病変でも約5倍,次の妊娠で新生児ループス(心病変)を合併するリスクが高くなる.前児で新生児ループス(心病変)を合併した母親の次の妊娠でヒドロキシクロロキンが次の児で新生児ループス(心病変)の発症を抑制することが米英仏の後ろ向きのレジストリ研究で報告された.現在,米国でオープンラベルの臨床試験が進行中で,本邦でも検証を行う予定である.今後,新生児ループス児および児の母親のその後の妊娠のレジストリを立ち上げることにより日本での臨床研究を促進することが期待される.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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