日本臨床免疫学会会誌
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合同シンポジウム1 細菌叢と免疫疾患
JS1-4 ヒト常在菌叢の生態と機能
服部 正平
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2017 年 40 巻 4 号 p. 257b

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抄録

  人体には数百種・数百兆個の常在菌が生息している.常在菌の住処は口腔,腸,皮膚など全身にいたるが,その種類や組成比は生息部位によって異なり,それぞれ固有の細菌叢が形成されている.しかし,その全体像の解明は長く困難となっていた.ところが,ヒト腸内細菌叢のメタゲノム解析技術の開発(2006年),大型プロジェクト(HMPとMetaHIT)や国際コンソーシアムIHMCの立上げ(2008年),次世代シークエンス技術を用いた大規模解析技術の開発(2010年)などを経て,今日では,人体の様々な部位の常在菌叢を構成する細菌種や遺伝子情報を大量に収集し,常在菌叢の生態及び機能の全貌を俯瞰することが可能となった.これらの研究から,常在(腸内)菌叢が個人間,国・集団間できわめて高い多様性をもつこと,種々の病態の常在(腸内)菌叢が健常者細菌叢から大きく変容(dysbiosis)していることなど,これまでの想像を超えてヒト常在菌叢がヒトの病態や生理機能と多様かつ密接に関係することが明らかになってきた.すなわち,常在菌叢の宿主へのsymbiosis(共生)とdysbiosisが宿主の生理状態を決定すると言う新たな健康と病気のコンセプトが認識されつつある.本講演では,日本人の腸内細菌叢の特徴など,疾患を含めたヒト常在(腸内)菌叢の生態・機能について,演者のグループが進めている研究の一部を紹介する.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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