日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム Human Immunology 解析から治療へ
S-2 関節リウマチおよび炎症性腸疾患におけるLRGの意義
仲 哲治
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2017 年 40 巻 4 号 p. 261b

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抄録

  近年トシリズマブ等のIL-6の機能を阻害する生物学的製剤が臨床に応用され非常に良い治療効果を示している.しかしながら,IL-6の機能を阻害する生物学的製剤による治療下においては,IL-6で発現が誘導されるCRP,SAAなどの急性期タンパク質やESRなどの血清バイオマーカーの変動が直接的および間接的に抑止されるため,正確な疾患活動性評価が困難となる.また,潰瘍性大腸炎(UC)や全身性エリテマトーデス(SLE)などIL-6を介さない炎症性疾患の存在も知られている.このような状況下,われわれはIL-6非依存性に誘導される新たな急性期タンパク質としてLRG(Leucine rich α2 glycoprotein)をプロテオーム解析により,RA患者血清から同定した.LRGは約50KDの機能不明の糖タンパク質で,CRPとは異なり,IL-6非依存性に炎症部位からも誘導される.この特性から,UCなどの炎症性腸疾患(IBD)において血清LRGは内視鏡的活動性と非常によく相関する.また,RAにおいてもトシリズマブ使用下におけるRA疾患活動性と相関する.興味ある事にLRGはTGF-βのシグナル伝達を増強する作用を持ち,LRG KOマウスにおいては,DSS誘導性腸炎やコラーゲン誘導性関節炎などの炎症が生じにくい.本講演では,LRGの炎症性腸疾患およびトシリズマブ投与下におけるRAのバイオマーカーとしての臨床的意義と炎症の病態形成における機能について報告する予定である.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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