日本臨床免疫学会会誌
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ワークショップ1 がん免疫のチェックポイント
WS1-4 なぜ,抗PD-1抗体は1型糖尿病を誘発するのか?~β細胞殺人事件,その真犯人とトリック!?~
阿比留 教生
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2017 年 40 巻 4 号 p. 264b

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抄録

  チェックポイント阻害療法による有害事象(irAE)は,全身臓器にみられるが,抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体で,その疾患スペクトラムが異なる点が注目されている.内分泌障害においては,甲状腺障害と1型糖尿病は抗PD-1抗体優位,下垂体炎は抗CTLA-4抗体優位に認め,特に1型糖尿病では,抗CTLA-4抗体単独投与後の発症の報告はこれまでのところ1例もない.膵β細胞は,PD-L1が高発現していることが確認されており,PD-1/PD-L1シグナルを介した末梢性の免疫寛容維持が不可欠な,ある意味“危険な現場”であると考えられる.近年のNODマウス研究では,β細胞での中枢性免疫寛容破綻のメカニズムの一つとして,分泌顆粒内でプロインスリンと分泌顆粒由来タンパクの断端が結合したhybrid-insulin peptideが発見され “neo-self” 抗原の一つとして注目されている.インスリン分泌顆粒では,プロインスリンからインスリンへと翻訳後修飾が生理的に進行しており,ある種の環境因子により不適切な翻訳後修飾が起こると,胸腺では発現されない “neo-self” が生成され,MHCとのcomplexを形成することで,中枢性免疫寛容が容易に破綻するのではないかと考えられるようになってきた.今回は,このように近年明らかにされつつあるβ細胞の分泌顆粒という危険な殺害現場での,“真犯人とそのトリック”解明の研究に焦点をあて,抗PD-1抗体による自己免疫が,なぜβ細胞を標的にするのかについて考察する.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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