2017 年 40 巻 4 号 p. 267b
全身性エリテマトーデス(SLE)は,妊娠可能年齢の女性に好発する全身性自己免疫疾患で,皮膚,関節,心,腎,漿膜,神経,血管など全身の多臓器を侵し,多彩な臨床症候を呈する.副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬に依存した非特異的治療が中心であったが,病態の解明により治療標的が明らかになってきた.SLEではIFN関連遺伝子の高発現が明らかになり,病態形成においてもIFNの役割が注目されている.B細胞や樹状細胞ではToll様受容体が高発現して細菌,DNA,RNAなどの刺激を受容し,抗体やIFNα等のサイトカインの産生を介してリンパ球の活性化や自己抗体産生を誘導する.一方,抗IFNα抗体シファリムマブ,抗IFN I型受容体抗体アニフロルマブの投与は,IFN関連遺伝子の転写を抑制し,疾患制御効果が期待される.殊にIFN関連遺伝子の高い患者に有効性が高く,斯様な患者に対してアニフロルマブを用いた国際共同試験第III相試験を実施中である.SLEはheterogeneityの高い疾患であり,患者のグルーピングによる治療の選別法(precision medicine)が重要な課題である.SLEにおいてもベッドサイドとベンチ間の双方向のトランスレーションこそが治療応用にブレークスルーを齎すものと期待する.