2017 年 40 巻 4 号 p. 318a
【背景】Dermokine(DMKN)ファミリーは,ヒトではα,β,γ,δ,εの5つ,マウスではεを除く4つのスプライシングバリアントからなる分泌蛋白である.Dermokine-β/γは表皮の上層,特に顆粒層に恒常的かつ特異的に発現し,炎症などの際に発現が亢進することが知られている.これまでの研究報告から,皮膚の角化やバリア機能に関与している可能性が示唆され,さらなるDMKNの役割の解明が必要と考えた.【方法】DMKN-β/γ欠損マウスを作成し,皮膚表現型を野生型マウスと肉眼的,組織学的に比較し,解析することで皮膚における病態生理学的な機能を解明する.【結果】DMKN-β/γ欠損マウスは,野生型マウスと比較して生後1週頃に一過性に鱗屑と皺壁の増加を認め,経表皮水分蒸散量(TEWL)は有意に上昇していた.また,HE染色や電顕像では,表皮顆粒層が肥厚し,ケラトヒアリン顆粒は有意に縮小・増数し,未熟なものが多くみられた.しかし,出生8日目以降はそれらの変化は自然に消失した.また,胎仔から高齢までいずれの時期においても遺伝子欠損による致死性はなく,成長障害や他臓器障害などの病的変化も認められなかった.【結論】DMKN-β/γはバリア機能など皮膚の恒常性維持に働くが,成長とともに他の分子によってその作用が代償ないしは発生段階特異的な発現調節を受けている可能性が示唆された.