日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
抗PL-7抗体陽性の多発性筋炎に発症した血栓性微小血管障害症の一例
田村 誠朗北野 将康東 幸太壷井 和幸安部 武生荻田 千愛横山 雄一古川 哲也吉川 卓宏斎藤 篤史西岡 亜紀関口 昌弘東 直人角田 慎一郎細野 祐司中嶋 蘭大村 浩一郎松井 聖三森 経世佐野 統
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2017 年 40 巻 6 号 p. 450-455

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抄録

  症例は65歳女性.X-17年に間質性肺炎合併多発性筋炎と診断されステロイド薬が開始.X-8年に関節リウマチを合併しタクロリムス(Tac)が併用となっていた.X年2月上旬から全身倦怠感と高血圧が出現,さらに血液検査で,血小板減少,溶血性貧血,破砕赤血球,LDH高値,高クレアチニン血症を認めたことから,血栓性微小血管障害症(TMA)と診断.TMAの原因としてcalcineurin inhibitor(CNI)腎症を疑い,Tacを中止し血漿交換を開始した.以降,破砕赤血球は消失し,血小板減少,溶血性貧血は改善したが,高血圧,腎機能低下が遷延したため腎生検を施行.その結果はTMAの病理組織像であった.ただしCNI腎症としてはTacの血中濃度は既存の報告と比較し低く,また薬剤中止後も腎機能低下が遷延していた点が非定型的であった.後に抗PL-7抗体が陽性であることが判明.本症例は強皮症の診断基準は満たさなかったが,同抗体陽性例では強皮症を合併したとする報告がある.すなわち潜在的な強皮症素因を背景にCNI腎症が重篤化した可能性が示唆された.抗PL-7抗体陽性の患者にTacを投与する際はTMAの発症に十分留意する必要がある.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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