日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
川崎病急性期にループスアンチコアグラントが一過性に陽性となった1例
成相 諒子小林 徹益田 博司小野 博今留 謙一窪田 満伊藤 秀一石黒 精
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2017 年 40 巻 6 号 p. 456-459

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抄録

  川崎病は血管内皮障害や凝固因子増加により血栓傾向となることが知られている.また,ループスアンチコアグラント(LA)は抗リン脂質抗体症候群において血栓性素因になりうるが,川崎病患者でLA陽性となった報告はない.症例は2歳の男児で,発熱,眼球結膜充血,口唇発赤,頸部リンパ節腫脹と紅斑が出現し,第5病日に川崎病と診断された.便中アデノウイルス抗原が陽性であった.免疫グロブリンを投与後速やかに解熱し,他の臨床症状も改善傾向となったが,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は徐々に延長し,第8病日に最大88秒まで達した.クロスミキシング試験はインヒビターパターンであり,LAが蛇毒法で陽性であった.低用量アスピリン治療を継続し,血栓塞栓症を生じることなくAPTT延長は改善した.同一免疫グロブリン製剤を使用した他の6人の患者ではAPTTの延長はみられなかったため,免疫グロブリン製剤中にLAが混入していた可能性は否定的であった.本例はLAが合併した最初の川崎病例である.川崎病の発症契機となる感染症ではLAを誘導して血栓傾向が増加する可能性が想定されるため,今後の症例集積による病態解明が望まれる.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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