日本臨床免疫学会会誌
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妊娠,分娩を契機に発症,自然寛解した多発性筋炎の1症例
片山 正哉河本 英作高石 知明内橋 正仁深見 隆則岡本 良三岩崎 正憲
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1990 年 13 巻 2 号 p. 158-164

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抄録

妊娠,分娩後に多発性筋炎を発症,自然寛解した1症例を経験した.症例は28歳主婦,昭和62年6月,初回双胎妊娠.妊娠25週羊水過多のため切迫早産, 2児とも周産期に死亡.産褥後3~4日目ころより下肢脱力感を自覚し,上肢にも波及し整形外科受診. CPK 10,089mU/mlを示し筋電図の筋原性変化を指摘され9日後内科入院,筋生検にて確定診断した.入院時,四肢の筋力低下と各種の筋原性酵素の上昇を認めたがCPK 3,474mU/mlとすでに低下しており,無治療で筋力も回復した.発熱などの先行する感染症状もなく,ウイルスの関与は否定的で,トキソプラズマ抗体も陰性.発症前に使用した薬剤を再投与したが反応はなく,免疫抗体,ホルモンの異常は検出されなかった.妊娠と多発性筋炎の合併はきわめてまれで,大半は筋炎の診断後に妊娠している.本例のごとく妊娠,分娩を契機に発症した筋炎の報告は内外にもみられず,若干の文献的考察を加えて報告する.

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