日本臨床免疫学会会誌
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クリプトコッカス血症・髄膜炎を呈した後天性免疫不全症候群の1例
井波 知子中山 智子富田 康之橋本 修西成田 進堀江 孝至
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1996 年 19 巻 3 号 p. 251-258

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抄録
症例は52歳の男性,発熱,口腔内カンジダ症の精査目的で入院となった.昭和62年から平成2年にかけてタイにて異性間性的接触があった.入院時, Human Imunodeficiency Virus-1抗体陽性, CD4陽性リンパ球数9/μl, CD4/CD8比0.01, 血液培養からCryptococcus neoformansが検出された.また,髄膜刺激症状は認められなかったが,髄液培養検査から,血液と同様にCryptococcus neoformansが検出され,後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴うクリプトコッカス血症・髄膜炎と診断した.アンホテリシンBを10mg/日から静脈投与開始し, 30mg/日に増量したところ,投与開始3週間で解熱傾向を認めたため,合計7週間,総投与量1,220mgで終了とした.以後は経口フルコナゾール400mg/日の維持療法に切り替え,外来通院が可能となった. AIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎・血症は予後不良の徴候であるが,本症例のように,特徴的な症状に乏しく,かつ髄液所見も軽微なことが多いので,診断・治療上留意が必要と思われる.
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