抄録
脾臓摘出患者は敗血症,髄膜炎などの重篤な感染症に罹患しやすく, OPSI (Overwhelming postsplenectomy infection)症候群として,注目されている.経過は電撃的で症状も激烈を極め,予後は不良である.我々は脾臓摘出10年後に, OPSI症候群で死亡した1成人例を経験した.患者は26歳,男性, 16歳時,交通外傷で脾臓摘出術を受けている.平成8年1月7日,下痢,嘔吐にて発症し, 3日目に意識低下,多臓器不全にて本院へ転院後,血液透析,血漿交換,免疫グロブリン,抗生剤,ステロイド使用するも,奏功せず,当日死亡した.末梢血塗抹標本にて双球菌を認めた. IgG 3欠乏症を呈し,肺炎球菌特異IgG 2抗体も低値であった.剖検では,副腎にWaterhouse Friederichsen症候群の所見を認めた.