抄録
症例は19歳,男性.光線過敏症の既往歴と共に持続する微熱,多関節痛等が認められるため入院となった.検査所見では血清トランスアミナーゼの上昇,白血球減少,血小板減少が認められた.自己免疫疾患の検査では抗核抗体, LE試験等が陽性であった. multiple low density spotsについては, CTガイド下肝生検において該当する部位から軽度のリンパ球浸潤とpiecemeal necrosisを伴う慢性型炎症を呈する非特異的肝炎の組織所見が得られ,臨床症状と検査所見を総合して肝病変を合併したSLEと診断した.慢性関節リウマチは関節X線所見等から除外され,自己免疫性肝炎はSLEの診断基準と肝生検組織像から否定された.ステロイド治療により本例ではSLEの諸症状が軽快すると共に肝機能障害,免疫学的異常等が正常化し,腹部CT上肝臓のmultiplelow density spotsも消失した.