日本臨床免疫学会会誌
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甲状腺細胞質上清抗原を用いた二重免疫拡散法による甲状腺自己抗体の分析
樋渡 恒憲宮地 清光前野 芳正岡村 和彦三村 孝百溪 尚子伊藤 国彦
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1983 年 6 巻 4 号 p. 295-302

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抄録
甲状腺自己抗体の検出にはPHA法が広く用いられているが,本法には抗体の識別,特異性について不明の点が多い.今回はこれらの点を解明するための第1段階として,ヒト甲状腺細胞質上清(HTS)分画を用いた二重免疫拡散法によって甲状腺自己抗体の分析を試みた.その結果,沈降抗体の出現速度により3種に分類した.HTS-1抗体はHTS lmg/ml以下でも24時間以内に沈降線を示した.本抗体はヒト臓器特異性抗体で,吸収試験などの成績からThyroglobulin抗体と断定した.本抗体陽性血清は355例中14例(3.9%)で, PHA法によるThyroglobulin, Microsome抗体価はともに402倍以上であり,このうち13例は橋本病であった. HTS-1抗体は部分的交差を示すものがあり,その多様性が示唆された. HTS-2抗体は濃縮HTS抗原を用いて48時間後に出現し,低頻度であるが,橋本病, Graves病に同定された. HTS-3抗体は濃縮HTS抗原と反応1週間後に出現し, 355例中52例(14.6%)に認められた.本抗体はMicrosome抗体と一致するかいなか不明であるが,橋本病およびGraves病患者血清中に高頻度に認められた.
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