IgG K型多発性骨髄腫(MM)の症例のIg生合成を分析することによって, MMにみられる多クローン性免疫グロブリン(Ig)の低下機序を考察した.本症例は末血中に形態学上,骨髄腫細胞の出現なく,白血球数・分類共に正常であったが,リンパ球のT:B比は90:2とB細胞の減少がみられた.末梢単核球(PMC)のin vitroにおけるIg産生は, IgA, IgM共に正常で, IgGは低下していた.骨髄単核球(BMC)のIg産生は, IgA, IgMが著明に減少し, IgGの減少はみられなかったが,このIgGは骨髄腫蛋白であった.
PMCおよびBMCのIg産生の成績を基にして考察すると,本症例にみられたIgA, IgM低下の機序は,骨髄中のIgA, IgMの産生障害と,末梢血中のB細胞の減少によるIgの産生減少によると推定される, BMCの骨髄腫蛋白の産生が少ないので,本症はいわゆるoligo-M-component typeと思われる.