日本臨床免疫学会会誌
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Lennert's lymphomaに合併した全身性クリプトコッカス症の1例
とくにCryptococcus n〓oformans抗原抗体価の臨床の意義について
青木 泰子大塚 盛男中澤 正樹中村 治雄依田 安弘阿部 帥
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1985 年 8 巻 2 号 p. 110-116

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抄録
Lennert's lymphomaに全身性クリプトコッカス症を合併した1例を経験し,その血清および髄液のCryptococcus neoformans抗原価をラテックス凝集法により,抗体価をスライド凝集法により経時的に測定して,臨床経過と対比検討した.症例は42歳女性, stage IVBのLennert's Iymphomaの患者である.多剤併用化学療法開始5ヵ月後に高熱,皮疹,髄膜炎症状を呈し,血液,髄液,皮疹分泌物よりC. neoformansを検出した.全身性クリプトコッカス症と診断し,アンホテリシンBの静脈内・髄腔内投与と5-fluorocytosineの併用療法を行い,臨床症状は消失し,すべての培養は9週間で陰性化した.本症例の抗原および抗体価と臨床経過との対比検討より,血清および髄液の抗原価の測定はクリプトコッカス症の迅速な診断に有用であり,また全身性病変をよく反映し,予後の判定にも有用であると考えられた.一方,抗体価は本症例のような免疫不全例における経過や予後の指標としての価値は低いことが考察された.
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