日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌
Online ISSN : 2433-7854
Print ISSN : 2433-7846
研究
アトピー性皮膚炎治療におけるステロイド外用薬およびタクロリムス軟膏の使用実態調査
大槻 マミ太郎五十嵐 敦之勝沼 俊雄藤澤 隆夫
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ジャーナル 認証あり

2018 年 1 巻 3 号 p. 163-176

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抄録

 アトピー性皮膚炎治療薬であるタクロリムス軟膏の添付文書に記載されている警告に関して, 臨床現場への影響について検証する目的で, アトピー性皮膚炎診療に精通している皮膚科および小児科363名の医師を対象に, ステロイド外用薬の現状も含めた使用実態調査を行った。

 薬剤の使用理由として「効果が良好だから」は, ステロイド外用薬98.1%, タクロリムス軟膏60.1%に対して, 「副作用が少ないから」は, ステロイド外用薬21.2%, タクロリムス軟膏73.2%であった。タクロリムス軟膏の発がんリスクに対しては, 85.4%の医師が否定的な見解であった。一方で, 発がんリスクの説明による患者 (保護者) からの使用拒否を19.6%の医師が経験していた。添付文書の「発がんリスクの警告に関する説明義務」については, 73.5%の医師が処方の妨げになり, 68.0%の医師が患者の不利益になるとの見解であった。本調査からタクロリムス軟膏の「発がんリスクの警告に関する説明義務」が, 患者が有効な治療を受ける機会を妨げている側面が浮き彫りとなった。

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© 2018 一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
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