2018 年 1 巻 3 号 p. 213-218
ホルムアルデヒドによる即時型アレルギーはまれであるが, 全身症状を有する重症例が多く, 通常の即時型アレルギーに比べて抗原曝露から発症まで時間がかかることが特徴的である。73歳, 女性。左上顎部の歯の痛みがあり, 近医歯科を受診。急性化膿性歯髄炎の診断で局所麻酔下に抜髄を施行した5時間後に, 手足の紅斑, 瘙痒が出現した。その後も根管治療を受けた際に, 毎回軽度の気分不良が出現していた。6回目の治療4時間半後に, 腹部に紅斑が出現したため当科を受診した。水溶性プレドニゾロン30mgを投与したが紅斑は背部, 大腿に拡大し, 血圧が測定不能となった。歯科初診時と2回目以降の治療で共通して使用していたホルムアルデヒドを被疑薬としてプリックテストを施行したところ, 陽性反応を示した。ホルマリン特異的IgEはclass 4 (Index36.90UA/ml) と陽性であった。以上より歯根管治療に含まれるホルムアルデヒドによる即時型アレルギーと診断した。歯科治療後にアナフィラキシー症状が出現した場合は, ホルムアルデヒドによる即時型アレルギーを考慮する必要がある。