抄録
目的:進行がんと共に生きることに苦悩する成人後期の患者と看護師とが,ケアリングパートナーシップの体験を通して,患者のがん体験とそこに寄り添う看護師のケアに関する認識に生まれる変化とその過程を明らかにする.
方法:研究デザインは,ニューマン理論に基づく実践的看護研究であり,解釈学的,弁証法的方法を用いた質的事例研究.参加者は,50歳代女性の進行がん患者であり,データは,対話の逐語録や看護師の自己内省ジャーナルを用いた.分析は,データから参加者にとって意味深い文脈を抽出して,理論に基づきその意味を解釈し,参加者や看護師のありようの変化を捉え,全体の変化の過程としてまとめた.
結果:ニューマンが提唱するケアリングパートナーシップを通して参加者は,自己の生き方を意味づけ直し,この生き方で良いとがんと共にある自己の人生の意味を新たに見出し歩み始めた.看護師も,自己のケアのあり方への内省を深めた.
考察:本理論に基づくケアは,進行がんと共に生きることに苦悩する成人後期の患者と看護師の内在する力を発揮し,進化と成長を促す支援となることが示唆された.