2020 年 3 巻 1 号 p. 12-17
下肢長の影響を考慮した椅子立ち上がり動作のパワー指標は、椅子立ち座り動作の所要時間よりも筋力、パワー、筋横断面積と関連性が高いことが報告されている。本研究では、10回椅子立ち座りテストの所要時間(STS Time Index :STS-T)と、身長と椅子の脚長から算出したパワー指標(STS Power Index:STS-P)が移動能力と関連しているかどうかを明らかにすることを目的とした。20~97歳の男女2055名を対象に測定を実施した。その結果、STS-TおよびSTS-P と10m速歩、階段昇段に関連性が認められた。年齢別で検討したところ年齢の増加に伴い相関係数も高値を示した。また、10m速歩の相関係数は階段昇段よりも高値を示した。したがって、測定による危険性が伴う高い年齢層において、STS-TおよびSTS-Pの椅子立ち座り動作の計測は歩行能力や階段昇段能力に関連する指標として有用であり、特に歩行能力を間接的かつ簡易に評価するものとして利用可能であることが示唆された。