2019 年 47 巻 1 号 p. 1-8
術中運動誘発電位 (motor evoked potential, MEP) モニタリングは広く行われているが, その結果の解釈には議論が多い。脊椎脊髄手術における術中MEPモニタリングに関して, 術前にMMT 2/5以下の麻痺を認めなかった脊椎脊髄手術349回において術後新たな麻痺を生じる振幅低下率, および圧迫性脊髄障害除圧術130回と圧迫性馬尾神経障害除圧術185回においてJOAスコアが術後改善する振幅上昇率のカットオフ値を末梢神経刺激複合活動電位 (compound muscle action potential, CMAP) による補正の有無それぞれに関して, receiver operation characteristic (ROC) 解析により算出した。術後新たな麻痺を生じるカットオフ値はCMAP補正なしでは80.6%の振幅低下 (感度100%, 特異度96.2%), CMAP補正有では77.9%の振幅低下 (感度100%, 特異度96.8%) であった。圧迫性脊髄神経障害除圧術130回において術後JOAスコアの改善を認めるカットオフ値はCMAP補正なしでは50.6%の振幅相対率 (感度88.3%, 特異度70.0%) であり, CMAP補正下では64.4%の振幅相対率 (感度75.8%, 特異度90.0%) であった。圧迫性馬尾神経障害除圧術185回において術後JOAスコアの改善を認めるカットオフ値はCMAP補正なしでは17.9%の振幅増加率 (感度50.0%, 特異度72.4%) であり, CMAP補正下では11.4%の振幅増加 (感度100%, 特異度58.0%) であった。末梢神経刺激CMAPによるMEP振幅の補正は, 圧迫性脊髄神経障害手術において術後神経症状の改善を予測する上では有用であった。