2019 年 47 巻 3 号 p. 149-154
世界的な高齢化の進展に伴い, 認知症の患者数は上昇の一途を辿っている。脳波はこれまで認知症の日常臨床においては, てんかんやせん妄, 意識障害などを除外するための補助診断として用いられてきた。認知症研究においては, 最近の画像研究の急速な進歩に伴い, 脳波はやや後れを取ってきた感は否めない。しかし, その高い時間分解能, 低侵襲性, 安価な設備や運用コストなどの利点が評価され, 近年脳波の重要性が高まっている。また新たな定量的脳波解析法の進歩も伴って, 脳波による認知症の早期診断に有用な新たな知見が蓄積されつつある。今回我々は, 脳波検査とその定量的な解析法の進歩が, 認知症の早期診断とその病態生理解明にどの程度迫りつつあるのか, 自験例を交えながら紹介したい。