2019 年 47 巻 3 号 p. 155-162
事象関連電位 (ERPs; event-related potentials) の測定は統合失調症の治療における改善のメカニズムを探索する一手法として有力である。本稿ではERPsを統合失調症患者の治療に応用した研究について紹介する。 (1) オランザピンを投与後P300のLORETA (low-resolution electromagnetic tomography) 解析で表される発生源電流密度の増加に伴い, 臨床指標 (言語記憶, QOLなど) の改善が見られた。 (2) ペロスピロン単剤へ切り替えでスクリプト課題の得点が改善した。P300を測定したところ左上前頭回の電流密度の増加が認められた。 (3) 精神病発症リスク状態の患者にペロスピロンによる薬物療法を行ったところ, P300振幅 (Fz, Cz), 臨床症状および認知機能が共に改善し, 良好な社会的転帰が得られた。