2020 年 48 巻 1 号 p. 24-31
終夜睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography, PSG) は, 1960–80年代には, 睡眠の生理学的研究の重要な武器であったが, その後, 臨床への応用が進み, 米国ではその実施をシステム化し, academic sleep centerの設立へとつながった。特に睡眠呼吸障害の有病率が高く, 循環器疾患や脳卒中の危険因子および悪化因子として働くことがわかってからは, この疾患に焦点を当てた形で大量のPSGが実施されるようになった。しかし, PSGは高コストであり, すべての患者に対応できないため, 呼吸に関する誘導のみ残した簡易型無呼吸モニタ検査の導入が近年進んでいる。ただし, 日本では, 当初からPSGが実施できる施設も人材も少数なため, 簡易型無呼吸モニタ検査に流れたという現場の事情がある。米国と日本とを歴史的に比較しつつ, 臨床神経生理学にPSGを取り戻すにはどうすればよいのかを考察した。