2021 年 49 巻 1 号 p. 15-21
AD/HDの病態生理に実行機能障害が想定されている。実行機能は, 背側の認知回路のみならず, 腹側の情動回路の関与が重要である。今回, 情動回路の評価法として, Wisconsin Card Sorting Test (WCST) 施行中の瞳孔径変化を計測し, 情動性自律反応の実行機能への関与を検討した。対象は, 健常成人9例, 定型発達児 (TDC) 17例, AD/HD 1例。解析はcognitive shift (CS) 時における瞳孔径変化を中心に行った。成人4例では同時にNIRSで前頭部脳血流を測定した。健常成人ではCS時に散瞳し, それ以外では縮瞳していた。CS時に前頭部のOxy-HbがNIRSで上昇する現象と同期していた。TDCではCS時の瞳孔径変化は発達的に変化しており, 15歳以上の年長群で成人と同様の結果となった。これは, WCSTの成績の発達的変化と一致していた。AD/HD例では, CS時の瞳孔径変化は縮瞳傾向であった。瞳孔径変化は実行機能とカップリングしており, 情動性自律反応の実行機能への関与が示唆される。