2021 年 49 巻 1 号 p. 22-29
神経発達症は状態像の寄せ集めにより診断されるが, その背景にある神経生物学的な機構を反映する簡便なマーカーがあれば, 経過フォローにおいても有用となる。今回は (1) ASDに対する顔認知課題 (サッチャー錯視) における瞳孔径変化, (2) ADHDでの自発瞬目頻度減少, (3) ASDでの睡眠脳波におけるnon-REM atoniaに注目してASD, ADHDにおける病態との関連を検討した。いずれも認知負荷のほとんどない (もしくは0の) 状態でのパラメータであり, 所与の病態を反映していると考えられた。上記はそれぞれ (1) 青斑核–ノルアドレナリン系, (2) 脳幹ドパミン系, (3) 背側縫線核–セロトニン系との関連を考察した。これらは神経発達症の発達における様々な代償戦略の基盤ともなりうる。