2021 年 49 巻 1 号 p. 37-44
注意欠如多動症 (ADHD) は, 多動衝動性, 不注意を主体とする神経発達症の一つとして知られている。その診断は, 保護者や教育者からの聞き取りや質問紙によって行われ, 主観的評価法が主体である。近年発達した非侵襲的脳機能評価法として, 脳波周波数解析, 事象関連電位 (ERP), 機能的近赤外線スペクトロスコピー (fNIRS) などが知られ, 神経発達症の客観的評価法として注目されている。ADHDでは, 前頭葉の機能低下などから, 異なるパターンの周波数分布やNoGo電位のようなERPの振幅低下や潜時延長, fNIRSによる前頭葉の酸素化ヘモグロビン (OxyHb) の低下などが報告されている。これらの検査法は治療の効果判定や症状の経時的変化などに有用であると報告されており, 非侵襲的脳機能測定法は神経発達症の診断や治療の点から臨床応用に期待可能な手法となっている。