2021 年 49 巻 4 号 p. 172-175
心理学において, 事象関連電位 (event-related potential: ERP) 成分と特定の情報処理の対応関係が検討されてきた。ERP成分の心理学的意味付けに基づき, 精神疾患や神経発達症におけるERP成分の特徴は解釈される。本稿では, まず, 反応抑制課題におけるERP成分の心理学的意味付けに関わる知見を紹介した。反応抑制課題のERP成分として, 代表的なものに, Nogo-N2とNogo-P3がある。先行研究から, Nogo-N2は, 反応実行前の認知処理 (例えば, 競合モニタリング) に関連し, Nogo-P3は, 反応実行後の反応抑制の処理に関連することが考えられた。次に, その応用例として, 発達協調運動症 (Developmental Coordination Disorder: DCD) の反応抑制課題のERP成分の特徴を紹介した。定型発達 (Typical Development: TD) 者とDCD者で, Nogo-N2の違いが認められなかった。他方, TD者と比較して, DCD者で, Nogo-P3が減弱した。したがって, DCD者の運動の不器用さの情報処理過程への影響は, 運動実行後の処理に限定されていることが示唆された。このように, ERP成分に関する心理学的な知見は, 精神疾患や神経発達症の理解に役立てることができると考えられた。