2021 年 49 巻 4 号 p. 176-178
注意は社会的生活を営む動物において極めて重要な生体機能であり, これが損なわれると様々な障害が起こる。そのため, その神経機構の解明は重要と言える。注意による情報処理の促進現象は行動的実験では古くから知られており, 反応時間の短縮や正確性の向上などが報告されている。一方, 注意の生理学的な研究の初期としては, 条件反射研究のPavlovや神経モデルを提唱したSokolovなどが挙げられ, 特に単一ニューロン活動記録が開発された頃から発展してきた。一方, ヒトを直接被験体とした注意の神経生理学的な研究は, 脳波における誘発電位記録法の登場以来, 大きく進歩してきた。これまでに, 誘発電位 (または事象関連電位ERP) 振幅の増大や潜時の短縮, 特異的な周波数活動の変調, ネットワーク特性の変化などが報告されている。本稿では能動的 (随意的) 注意について古典と最近の知見のいくつかを紹介したい。