2021 年 49 巻 6 号 p. 490-495
[目的] 神経磁界計測装置 (以下MNG) を用いた従来の肘部正中神経刺激後の頸髄神経誘発磁界の計測では上位頸髄の伝導は時間的分散の影響により確認が困難であった。そこで上腕近位部正中神経刺激の有用性に関して健常者で検討を行った。[方法] 対象は神経症状を有さない健常成人5名。上腕骨内側上顆から15–17 cm近位の上腕二頭筋-三頭筋間で正中神経に電気刺激を加え, 上位頸髄神経誘発磁界を測定。磁界強度や再構成電流の解析を行った。[結果] 5例全例で上位頸髄において神経活動に由来する磁界データを可視化することができた。肘部正中神経刺激時の磁界と比較して上腕近位部刺激では約1.5–2倍の増強を認めた。[考察および結論] MNGを用いた頸髄神経誘発磁界の報告は既にSumiyaらによって報告されている。従来の方法よりさらに中枢の上腕近位部刺激を行うことで上位頸髄磁界計測も可能になった。今後, 上位頸髄疾患の機能診断にMNGが有用な検査となることが期待される。