これまでにわれわれは, 末梢神経の機能評価に最適化した生体磁気計測装置を用いて, 神経磁界計測による上肢末梢神経の客観的機能評価法の開発に取り組んできた。今回, アーチファクト除去アルゴリズムの適応と, 空間フィルター法による等価電流の計算により, 手根管部正中神経, 肘部尺骨神経と腕神経叢部磁界計測に成功し, 末梢神経障害の詳細な障害部位診断が可能となった。本手法は, 周囲の骨軟部組織の影響を受けにくく, 高い空間分解能を有し, 簡便にインチングも可能であり, 従来の電位計測の偽陰性を軽減できる可能性が示唆された。単純X線画像やMRI画像などの形態情報と, 神経電流のインチングを重ね合わせることもでき, 術式決定にも有益となる可能性が考えられた。さらに, 軸索内電流と脱分極部の内向き電流を可視化することができ, 本手法は様々な末梢神経障害の診断や病態把握に役立つ新たなルーツとなることが期待される。
抄録全体を表示