臨床神経生理学
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特集「EP/ERP 半世紀:先人からつなぐ臨床神経生理学」
ABRとVEPの発見
その展開と臨床神経生理学への貢献
飛松 省三
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2024 年 52 巻 1 号 p. 28-37

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抄録

Jewettら (1970年) が初めてヒトの頭皮上から聴性脳幹反応 (ABR) を記録した。一方, Hallidayら (1972年) は多発性硬化症 (MS) の視神経炎の評価にパターン反転刺激による視覚誘発電位 (VEP) が有用であることを初めて報告した。本稿ではこの2つの手法の臨床神経生理学への貢献について概説する。ABRの登場により, 脳幹の聴覚経路が客観的に評価されるようになり, 聴力判定や脳幹機能の評価の基本検査となった。またABRは, 遠隔電場 (far-field potential) である短潜時体性感覚誘発電位 (SEP) の発展に大きく貢献した。これにより, ヒトの頭皮上から末梢神経や脊髄の電位を記録することが可能になった。フラッシュVEPは, 同一個人や個体間で波形がばらつくため, 臨床応用が困難であったが, HallidayらのパターンVEPは安定して記録され, 多発性硬化症の診断基準となった。その後, 並列的視覚情報処理の観点から, 筆者らは多モダリティVEPを開発した。これにより, 精神神経疾患の病態評価が可能になった。臨床神経生理学に携わる者として, 先人の独創的な発想を忘れてはならないし, それを超える手技の開発が望まれる。

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© 2024 一般社団法人 日本臨床神経生理学会
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