臨床神経生理学
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52 巻, 1 号
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原著
  • 阿部 達哉, 大塚 亮, 蜂須賀 明子, 小森 哲夫
    2024 年 52 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    運動単位数推定 (MUNE) は病態による運動単位数の変化を評価する検査法である。一方, F波は少数の運動単位電位が構成する複合筋活動電位であるが, 同じ波形が繰り返して記録される確率が低いことから, そのようなF波は反復F波と呼ばれ, 単一運動単位電位として解釈される。この解釈を応用したMUNEとして, F波法 (F-MUNE) がある。今回, F波記録からF-MUNEを算出する自動解析プログラムを開発し, 有用性を検討する目的でALSと健常対象 (CNT) の間で成績を比較した。また, 既存のMUNEの手法である多点刺激法 (MPS-MUNE) とF-MUNEの成績の相関について検討した。ALSのF-MUNEはCNTより低値であり, MPS-MUNEの成績と正相関の関係であった。F-MUNEは他のMUNEと同様に, ALSの運動単位数の評価ができたことから, この新たな自動解析は神経筋疾患における臨床への応用が可能である。

投稿総説
  • 当院の経験から
    高嶋 浩一, 星野 隼也, 土谷 幸平, 三輪 道生, 齊藤 寛浩
    2024 年 52 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    当院の術中神経モニタリング (intraoperative neurophysiological monitorring; IONM) の導入について報告した。われわれは術式や疾患によりIONMの項目を選定し, 必ず複数のマルチモダリティIONMを試みている。IONMの準備では他職種と一緒でも, 躊躇せず積極的に対応する必要がある。雑音 (ノイズ) の混入を防いで, きれいなモニタリング波形を得るために, 記録電極は可能な限り針電極を使用し, 電極のリード線を束ね, 大電流が発生する医療機器から電極ボックスを遠ざけることが大切である。そして, デジタル平均加算はノイズと同期しない周波数に設定して行うとよい。また, 持続電気刺激による誘発筋電図では, より神経への密着性が高い脳綿電極を使用することにより, 安定した電気刺激が可能である。IONM波形の判定では運動誘発電位単独では偽陽性, 偽陰性になる可能性があるため, 他の誘発電位を用いて相補的に判断をすることが重要である。

  • 宮内 哲
    2024 年 52 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    脳波の黎明期から臨床脳波学の成立に多大な貢献をしたGibbs夫妻の功績, ヒトの脳波を発見したHans Bergerとの親交, 1963年のKennedy大統領の暗殺に端を発し, 臨床脳波の解釈が最大の争点になった裁判でのFrederic Gibbsの言動を紹介する。

特集「EP/ERP 半世紀:先人からつなぐ臨床神経生理学」
  • 矢部 博興, 柿木 隆介
    2024 年 52 巻 1 号 p. 26-27
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー
  • その展開と臨床神経生理学への貢献
    飛松 省三
    2024 年 52 巻 1 号 p. 28-37
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    Jewettら (1970年) が初めてヒトの頭皮上から聴性脳幹反応 (ABR) を記録した。一方, Hallidayら (1972年) は多発性硬化症 (MS) の視神経炎の評価にパターン反転刺激による視覚誘発電位 (VEP) が有用であることを初めて報告した。本稿ではこの2つの手法の臨床神経生理学への貢献について概説する。ABRの登場により, 脳幹の聴覚経路が客観的に評価されるようになり, 聴力判定や脳幹機能の評価の基本検査となった。またABRは, 遠隔電場 (far-field potential) である短潜時体性感覚誘発電位 (SEP) の発展に大きく貢献した。これにより, ヒトの頭皮上から末梢神経や脊髄の電位を記録することが可能になった。フラッシュVEPは, 同一個人や個体間で波形がばらつくため, 臨床応用が困難であったが, HallidayらのパターンVEPは安定して記録され, 多発性硬化症の診断基準となった。その後, 並列的視覚情報処理の観点から, 筆者らは多モダリティVEPを開発した。これにより, 精神神経疾患の病態評価が可能になった。臨床神経生理学に携わる者として, 先人の独創的な発想を忘れてはならないし, それを超える手技の開発が望まれる。

  • 尾﨑 勇
    2024 年 52 巻 1 号 p. 38-52
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    体性感覚誘発電位 (somatosensory evoked potential, SEP) 研究の歴史を概観し今後の課題と展望について述べる。世界初の報告はミオクロニーてんかん患者で感覚刺激後の脳波重ね書きで得られた巨大SEP反応であった。1970–80年代は大脳へ至る体性感覚伝導路の種々のレベルでの活動がSEP成分にどのように反映されるかに注目が集まり臨床応用された。ヒト初期皮質反応が3b野起源か1野と4野起源かの大論争があったが, 磁場計測により接線方向の電流発生源が確認され3b野起源説が正しく, 約2 ms遅れて1野起源の反応が重畳することが明らかになった。初期皮質反応に重畳する600 Hz高周波信号の研究が進んで, 今日では臨床応用と研究の新領域となった。3b野と1野の活動の時空間的特徴や運動・感覚皮質のβ振動との関連など今後の研究発展が期待される。

  • 波形発見から時間周波数解析を用いた運動関連脳機能マッピング
    音成 秀一郎, 松橋 眞生, 小林 勝哉, 菊池 隆幸, 池田 昭夫
    2024 年 52 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    ヒトの随意運動に先行して脳内で発生する主に緩電位変化を逆行性加算平均法で脳波記録したものを運動準備電位movement-related cortical potentials (MRCPs) と呼ぶ。その発見は1965年で, その後ヨーロッパでは精神心理研究とも深く結びついて研究の隆盛をもたらした。そして, 1980年にShibasakiらによるMRCPの各構成要素を頭皮脳波から定義して運動生理学の探求が本格的に展開された。一方で長らく不明瞭だった運動皮質におけるMRCPの詳細な起源は, その後にてんかん外科治療の術前精査の一環として行われる脳内電極を用いたMRCP研究で明らかとなり, 一次運動野や補足運動野における役割の発見と臨床応用につながった。また同時に事象関連同期/非同期 (ERS/ERD) も脳機能マッピングに展開され, 近年では複数の異なるスペクトラム解析で高精度の脳機能マッピングが可能となった。

  • From the past to the future
    太田 克也
    2024 年 52 巻 1 号 p. 62
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー
特集「臨床検査技師の今後の教育について」
  • 所司 睦文, 片山 雅史
    2024 年 52 巻 1 号 p. 63
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー
  • 中倉 真之, 短田 浩一, 崔 聡, 木下 真幸子, 浦田 洋二
    2024 年 52 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/20
    ジャーナル フリー

    当院は専従の脳波検査技師や脳波専門医がおらず, 脳波教育の環境が整っていなかったため, 指導医との脳波判読会, 院内多職種勉強会および他院検査技師との合同勉強会を通して脳波教育に取り組んだ。その結果, 技師が判読技術を習得し, 脳波検査室の検査技術が向上しただけでなく, 医師や他院技師との連携が強化された。近年, 神経救急領域ではリアルタイムで脳波判読を行い, 症状と総合して診断し治療介入することが重要視されており, 検査に立ち会う技師の役割は大きい。また, タスクシフト/シェアの観点から技師による判読が求められる可能性がある。したがって, 多施設が協力して判読技術を持った検査技師を育成することで, 地域の脳波検査室の水準が底上げされて脳神経疾患診療の質向上につながり, ひいては患者の利益に寄与すると考えられる。

  • 小野澤 裕也
    2024 年 52 巻 1 号 p. 70-72
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    神経生理検査のみならず臨床検査技師をはじめとする医療従事者にとって, 外部講習会は自施設では得られない知識や技術を習得するために重要である。本学会や日本臨床衛生検査技師会など多くの団体が講習会を開催しており, 参加者は数ある講習会の中から, 自らが求める情報を得られる講習会を探し選択している。対面式の講習会が主流であった以前は地域性などの環境要因により, 講習会への参加が困難なことも少なくなかったが, オンライン型講習会やハイブリッド型講習会の普及により講習会の門戸は広がった。新型コロナウイルス感染症の流行により講習会の開催方法が大きく変わった現在, 外部講習会が臨床検査技師教育へ最大限に貢献するために必要なことは何であろうか。本稿では外部講習会の過去から現状までの変遷を考察し, 今後の情報共有などを含めた課題について述べる。

  • 佐藤 研吾
    2024 年 52 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    臨床検査技師を目指す学生の卒前教育と, 臨床検査技師国家資格取得後の卒後教育は臨床検査技師の質向上の点で重要である。卒前教育では, 目標や将来ビジョンを明確にすることで学生のモチベーションアップを促し, より早期から医療従事者としての興味や自覚を持たせる教育が必要である。卒後教育では, 早い段階で調べる癖を付け, 発表の機会を与え, 研修会参加や資格取得を促すことでやりがいを見つける手助けをすることが重要である。今後の教育として卒前教育が新カリキュラムへ移行したことに伴い, 臨床検査技師養成校及び臨地実習受け入れ施設両方が教育に関心を向けることが重要であり, 教育のできる臨床検査技師の育成が望まれる。

  • 八木 和広, 野地 七恵, 茭口 朋恵, 赤澤 香菜
    2024 年 52 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    神経生理検査に携わる臨床検査技師には, 精度の高い検査報告の責務があり, 相応の知識と技術が要求される。神経生理検査は, 技術に依存することが多い。さらに, 精度の高い検査報告をするには, 検査技術だけではなく神経生理学や電気工学的な知識も要求される。精度の高い神経生理検査業務を維持するためには, 後進へ引き継いでいくことが重要である。そのためには, モチベーションを上げる工夫と知識や技術を上げる工夫が望まれる。筆者は, モチベーションを上げることとして, 検査業務に興味を向け, 充実感が得られるようにしている。また, 本学会の認定技術師の制度は, 知識の向上だけではなく, モチベーションを上げることにも繋がり教育的な役割も大きい。神経生理検査を学ぶためのツールとして, 本学会が企画する脳波セミナー・アドバンスコース, 神経筋診断セミナー, 術中脊髄モニタリングセミナーなどの主催セミナーや関連講習会, 会員e-Learningがある。他学会の学術集会やセミナー, 研究会や各メーカー主催のWebセミナーなども有用である。これらの研修会を有効に活用していただきたい。そして, 筆者は施設見学や施設研修をお勧めする。現場で見聞きすることは, 実臨床に沿ったものであり臨床に活かせるものが多いからである。検査の指導方法は, 以前は自主性や主体性を重要視していたが, 最近はこちらから具体的に説明し指示を出すようにしている。協調性や協働を重要視する世代に指導する側も合わせていく必要があると考える。しかし, 自主性や主体性も重要であるため指導後の検査の進め方は, マニュアルを順守しつつ根拠を持った方法であれば主体性に任せている。新規に検査を導入する際には, 実技研修会や施設研修などで技術を習得した後に, 実臨床で開始していただきたい。これらを私が経験したことを中心に紹介する。

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