2024 年 52 巻 1 号 p. 53-61
ヒトの随意運動に先行して脳内で発生する主に緩電位変化を逆行性加算平均法で脳波記録したものを運動準備電位movement-related cortical potentials (MRCPs) と呼ぶ。その発見は1965年で, その後ヨーロッパでは精神心理研究とも深く結びついて研究の隆盛をもたらした。そして, 1980年にShibasakiらによるMRCPの各構成要素を頭皮脳波から定義して運動生理学の探求が本格的に展開された。一方で長らく不明瞭だった運動皮質におけるMRCPの詳細な起源は, その後にてんかん外科治療の術前精査の一環として行われる脳内電極を用いたMRCP研究で明らかとなり, 一次運動野や補足運動野における役割の発見と臨床応用につながった。また同時に事象関連同期/非同期 (ERS/ERD) も脳機能マッピングに展開され, 近年では複数の異なるスペクトラム解析で高精度の脳機能マッピングが可能となった。