抄録
先天性無痛無汗症は温痛覚欠如, 発汗障害, 知的発達症, 神経発達症を特徴とする常染色体潜性遺伝の疾患である。温痛覚に関わる感覚神経 (無髄体性C線維と小径有髄線維Aδ) と発汗などを調節する無髄自律性C線維 (交感神経節後線維) は, 発生学的に欠如する。本症ではほぼ全員に両側Horner症候群を認めるため瞳孔計を利用して自律神経系の動態を解析し, 病態との関連を検討した。コントロールと比較すると初期瞳孔径は小さく, 縮瞳速度や散瞳速度は低値で交感神経に加えて副交感神経の機能的変容も認められた。交感神経は乳児期早期からの二項関係の成立に関与することや本症では痛み認知の欠如からくる独自の共感性が想定されることから, 発達の基底におけるoperating systemとしての自律神経系が知的発達症, 神経発達症の病態に何らかの関与があることが想定された。また, 本症と先天性無痛症との鑑別で初期瞳孔径が重要であること (本症では小さい) を指摘した。