抄録
神経発達症の脳機能研究は, 生物学的メカニズムの解明を目指し, 近年大きく進展してきた。20世紀には神経発達症を含む精神疾患の診断基準が統一され, ある程度, 均一な診断が可能となった。さらに近年は脳機能測定技術が目覚ましく進歩し, 自閉スペクトラム症 (ASD) などにおける脳機能に関する多くの知見が得られている。しかし, これらの疾患は遺伝と環境の複雑な相互作用を反映しており, 臨床症状の多様性も影響して, 病態メカニズムの完全な解明には至っていない。これからも年齢や症状の多様性を考慮したデータの集積が必要であり, 神経発達症の診断・治療における生物学的指標の確立はまだまだ難題である。本総説においては, 現時点における幼児用脳磁図計 (MEG) による幼児期ASDの研究成果について報告すると同時に, 神経発達症の幼児期の脳研究の難しさについても考察する。