抄録
高齢化社会を迎え、大動脈瘤の罹患率は著しく増加している。しかし当疾患は自覚症状に乏しく、偶然の発見が殆どである。大動脈瘤を発見する手段として、画像診断は時間的・物理的に多くの集団へのスクリーニングには不向きであり、血液マーカーが発見されればその有用生は高いと期待される。研究の目的は、患者の血漿から発現蛋白質を検出・同定・定量することにより、真性大動脈瘤の発生・拡大に関与する蛋白質群と疾患との関係を比較解析することである。
これまでに大動脈瘤発生に関わる蛋白質を特定するため、患者血漿と健常者血漿との比較解析を行った。しかし健常者から得られた解析結果は、群内での検出シグナルのばらつきが多く好ましい比較対象とならなかった。つぎに瘤拡大に関わる蛋白質を特定する目的で、大動脈瘤患者内で瘤拡大傾向を示す群(10例)と瘤径不変で経過している群(7例)との比較を行った。全サンプルからアライメントされたシグナルは9934個で、そのうち2群間で有意差(p<.001)を示したものが719個存在した。そのうち277個が、有効と考えられる測定領域内に存在した。さらにその中には、特に群間判別が高いと期待されるシグナルが102個認められた。今後これらのシグナルが示す蛋白質が何であるかの同定解析を行い、同定された蛋白質の臨床的意義を追究する予定である。